落語にみる江戸時代のエコ社会

「時そば」という有名な落語があります。昔は蕎麦屋さんは重い道具を天秤棒で運んでいました。いま、お蕎麦やラーメンの出前は原付バイクですね。人力だと、ガソリンを消費しませんし、排気ガスで空気を汚すこともありません。

 

 

そのほかにも江戸時代は沢山の物売りがいました。落語には、「飴売り」「南瓜売り」などが出てきます(「孝行糖」)。

 

 

自動車もありませんでした。何に乗ったでしょう?馬や駕籠や舟です。「蜘蛛駕籠」という落語があります。馬は草を食べますから、ガソリンは使いませんね。舟は、竿や櫓、帆を張って風力を利用しました。★竿と櫓の所作!

 

 

後は、自分の足で歩くだけ。藁で作った草鞋を履きました。「ぞろぞろ」という落語が教科書に載っている学校があるかもしれません。藁は米作りでできる副産物ですから、本当にうまい利用法ですね。藁は他に、蓑、俵、むしろ、畳どこ、縄、畑の肥料、牛馬のえさになりました(「長屋の花見」「鰍沢」「芋俵」)。納豆は昔は藁に包んでいました。見たことがありますか?藁は植物ですから、太陽のエネルギーでできています。

 

 

他に江戸時代の生活に利用された植物といえば、竹。物干し竿、火吹き竹。「たがや」という落語があります。桶の箍にも竹を使いました。★たがやの所作。羊羹やおにぎりが竹の皮に包んであるのをみたことありますか?子どもの遊び道具も竹でできているものがあります。わかりますか?竹トンボ、竹馬、凧。今のおもちゃはプラスチック。石油からできています。プラスチックの処理はいま問題になっています。ゲームは電気を使いますね。電気は、石油などで生み出します。

 

落語の中には、沢山の登場人物が出てきます。熊さん、はっつあん、ご隠居さん、すこしぼーっとした与太郎(「牛ほめ」)に、大家さん、小僧の定吉や、若旦那。こうした登場人物はみんな長屋に住んでいます。長屋と言うのは、団地やアパートのような集合住宅。九尺二間ですから、6畳ぐらいの狭いところにみんな住んでいました。一緒に暮らしていたから、お互い助け合って、人情が生まれたんですね。出掛ける時に、鍵を「かけ」なくても、声を「かけ」ればよかったんです。

 

「長屋の花見」など、落語の中には「長屋もの」と言われる長屋を舞台にした落語が沢山あります。長屋の人たちは貧乏なので、家賃が払えないときもあります。そんなときにも大家さんの収入になるものがありました。なんでしょうか?

 

すこし汚い話ですが、正解は「うんち」です。下肥といって、農家の肥料になるんです。共同便所の下肥をもらいに農家の人がやってきて、代わりに野菜などをくれました。これが大家さんの収入になったんですね。また、かまどの灰も肥料になりました。化学肥料など使わなくても、経済と社会が円滑に動いていました。

 

エコやリサイクルの考え方は今の時代に始まったのではなく、昔からあったんですね。「羅宇屋」さんといって煙管をなおしたり、下駄をなおしたり、「いかけ屋」さんといって金物を直したり、落語にもこういった職業はたくさん出てきます。本当に一つのものを修理しながら、大切使いました。こういったものを大切に使う精神は昔からあったんですね。みなさんにもそういった精神を大切にしてもらいたいです。