「江戸城総攻」三部作のうちの「薩摩屋敷」二場一幕
松緑の西郷隆盛は、その朴訥さ、その誠実さがその人間にはまっている。この場のせりふは、時に心情の吐露、時に情景の描写、時に周囲の人間への対話と、各方向に向かって行く。その変化、距離感。
「裏表先代萩」。
第一場の道益殺し
団蔵の大場道益。いかにも金貸しもする町医者らしく、欲のためには毒薬も調合するし、お竹にも色目を使うという人間をよく描いている。それでいて芝居の運びもサラサラと。
御殿。
万次郎の栄御前は、貫目、悪ともに効いていい。
小助の対決。
菊五郎の小助は、白塗りの堅気の商人が悪に戻るところはお手のもの。
詰所から刃傷。
ここの菊五郎の顔が実に立派である。色気があって、凄味があって、はなやかで、これぞ仁木弾正という姿。